人訴の家裁移管(T)現在,人訴の家裁移管について,二点お聞きしたいです。人事訴訟は現在,民 事で 対審構造で行っていますが,これが家裁に移管されても全く同じ形でやる のでしょうか。また,家裁での法廷や立会い等はどうなるのでしょうか。例えば離婚訴訟の場合,調停前置で話がつかない場合に訴訟で決着をつけるという形になっているが,それを他の乙類審判のように人訴をやるのでしょうか。2点目として,遺産分割の前提問題として,遺産の範囲や相続人の範囲を確定することを訴訟でやることになっていますが,実際は調査官が調査し,確定してそのまま審判していることがあります。そうすると,家裁でそういった前提問題について結論を出した部分には既判力がないので,遺産分割の紛争を解決する範囲でしか意味がない調査とか,結論ということになる実際にちゃんと結論を出そうとすると地裁でそういった点について訴訟することになります。それを,家裁の審判で行うのか,全く訴訟の形で行うのでしょうか。 (本部:I) 今の点ですが,議論としては,最高裁は非訟手続を中心とした主張をしていますが,日弁連や関係団体は人訴についても訴訟手続でやってほしいと言っています。日弁連等は,弁護士が関与する時に非訟手続的な考えだと職権主義的になってしまい,弁護士が入る余地がなくなるので当事者主義的構造に調査官を入れるべきだという考え方をしています。今の議論の流れとしては,調査官が直接,関与することになるが,調査官に対する反対尋問はやめましょうということになっているようです。すなわち,本当の意味で地裁から家裁に訴訟として,人事訴訟を移管してくるという考え方をとっています。問題は調査官の調査票を当事者主義的構造の中でどう生かしてくるのか,証拠になりうるのか否か,もしくは調査官を参与させるためにこういう手続をとっていくのかという議論になっているのではないかと思われます。日弁連が言っているような形になれば,家裁には法廷を設置しないことになります。もし当事者主義的構造で調査票のあり方の問題だけだということなると,今の訴訟事件のうち,5%くらいは家裁に移管することになりますので,今の家裁の人的物的施設では対応できないということになります。しかし,その具体的手当ての議論はなされていません。あえて言えば,地裁の法廷を借りるということになると思われます。あまり実務的な議論はなされていません。人訴を家裁に移管させて,当事者主義でやりましょう,調査官を参加させるが,対審構造には直接的には関与させないといった,そういった議論が中心となるのです。現在の予算では人訴の家裁移管によって,法廷を増設することはありえません。地裁とのすみ分けの問題にならざるを得ないと思われます。また,遺産分割の問題ですが,家裁から地裁に遺産分割を引き上げて統合する案が弁護士会の中にあります。もう一つ,遺産分割を家裁に移管するという案もありますが,後者の意見の方が多かったのです。しかし,遺産分割の前提問題等の細かい議論が法制審議会の中では十分,詰められておらず,審議未了のまま保留になる可能性があります。仮に,遺産分割事件が家裁に持ってこられた場合,その前提問題には調査官が関与することは全くないという見解になっています。そして調停の中で調査し,作成された調査票を訴訟でも使えるかということが議論の中心となっています。調査官のやっている調停と訴訟が同時進行できるような方向を考えているような議論をしています。 (O) この議論の中で,人事訴訟の家裁移管を考える場合,最高裁のいう非訟手続型 の移管なのでしょうか。我々が普通に考えれば,日弁連がいう当事者主義的なものの方がイメージしやすいと思われます。例えば調書をどうするか,非訟事件とでは日々の進行の仕方も違ってきますがどうでしょうか。 (本部:I) 議論としては,非訟手続でやるという方向にはなっていないと思われます。しかし,当事者主義的なことをやろうとしても,実際に具体化する時に手続の中に調査官がどう関与していくかということになると,我々からすればゼロなわけですね。単純に遺産分割事件は家裁への管轄権の移管というだけであって,調査官が参加するような何らかのシステムがあるわけではないということにならざるを得ないのです。ただ,●●の弁護士たちは,●●家裁では調査官が遺産分割の前提問題を実務としてやっており,だからこの調査を訴訟の方に活用できるのではないかという議論があります。弁護士からすれば,訴訟というのは当事者主義的構造であって非訟手続のものは訴訟とは言わないと考えているのです。メリットは何かというと,当事者が地裁と家裁の間を行き来することがなくなるという前提で制度設計をするなら,家裁なり地裁に移管した方が便利であるというだけになります。ただ,●●や●●●の家裁でやっているモデルがあるので,調査官が使えるのではないかという議論もあります。イメージとしては,弁護士会が言っている案では,今の形と同じで,裁判所が変わるだけです。最高裁のイメージでは管轄権が変わるほか,やり方そのものが非訟手続に変わって家裁型になるということになります。 (N) ADRについてですが,裁判外のADRが増えれば債務名義がどうなるかという問題があります。債務名義を取るために訴訟を新たに起こさなければならないことになると思いますが,どうでしょうか。 (本部:I) 原点は,ADRというのはそもそも裁判所には関係ないのです。しかし,司法分野でADRを作った場合,債務名義を取ることを考えるとADRに参加した人は裁判所手続を活用できるということを想定しているようです。仮に裁判所に近いような仕組みでADRが使われた場合には,ADRは基本的には裁判手続を活用できるタイプのADRだと,言い換えればADRに一定の裁判所との連関性を付けて,債務名義の様に法的拘束力のあるものについては,裁判所の制度も同時に活用できるようなシステムを作る必要があります。民事調停は裁判所内のADRだということができるといえます。 (N) 交通事件に関しては紛争処理センターというADRがありますが,そこで処理 できないものについては訴訟手続になるわけですが,そういった裁判外ADRに なると調停すらできないことになるのでしょうか。 (本部:I) ADRというのは,当事者がどのADRを使うかは自由に選択ができるという ことになっています。だから,交通事件においては民間型のADRを使うのも自 由だし,裁判所側のADR機関を使うのも自由なわけです。例えば交通処理セン ターやADRを多段階に色々なところに作れば選択の幅が広がるわけです。 現在,民事調停や労働調停等については,裁判所外のところに行きたいという 意見は出ているようです。 (T) 調査官の中にD種の方の採用の割合とか,D種の方の全体に占められている割 合はどうでしょうか。 (本部:I) 全体で5割は越えています。調査官は,かつては心理学が一番多く,全体の4~5割,社会学が3割だったのですが,D種ができてからはD種すなわち法律から調査官になる人が5~6割になりました。現在では心理学や社会学で入ってくる人は大幅に少なくなっています。 (O) 書記対の方で議論があったのですが,実態として,具体的に何が移管されるのか,移管の範囲もわからないのではないかという話がありました。家裁の方でプロジェクトを作っているとのことで,家裁から意見反映してほしいというような議論がありました。 (司会) ●●支部の書記対で色々話をした時に,人訴が家裁移管した場合に書記官がどういう影響が出てくるのかということが出ました。いわゆるタ事件としての人訴 だけが来るのか,遺産分割事件までがくるのかわらないという議論を行いました。 (O) 今度,最高裁が職員制度改革について説明会を行うとのことですが,しかしながら,司法制度改革がこれほど言われているのに最高裁として,まとまったものや説明の機会が全然ないという話があって,人訴の家裁移管にしても,家裁に対してどんな説明がなされているのかわからない状態ですが,その点についての情報があれば教えてほしいと思います。 (本部:I) 最高裁は,基本的には司法制度改革に関しては最高裁がやるべき問題ではなく立法府がやるべき問題だという姿勢をとっています。すなわち我々は立法府が決めた法案,これは20以上あるのですが,そこで決めたことについて最高裁が具体的に取り組むということです。公務員制度改革の場合は,あてはめが各省庁,がそれぞれ独自の制度設計になっているので,皆さんに情報を知らせているのですが,司法制度改革については,自分たちは立法府に呼ばれた時は意見反映しているが,自分たちから対案を作って立法府に持っていくという姿勢は取っていないません。しかし,法務省の事務局に何名か裁判官が派遣されているので,その人達を通じて意見反映しているのです。最高裁のまとまった案を皆さんに出す立場にないというのが最高裁の考えです。逆に言えば,立法府とか推進委員会でやっている意見が非常に重要です。人訴移管についてはアクセス検討委員会を意見書を持っていったのですが,問題は簡裁については全く意見がまとまっておらず我々側の意見も不十分で意見として反映できるような下地がないので,持っていけないのです。そこが致命的で,とりわけ書記官層への働きかけに関する議論がなされていないのです。是非,そこのところを議論をしていただければと思います。人訴移管については,書記官の業務が増えることは間違いないので,そういった議論が必要ではないでしょうか。 (W) 基本的な質問ですが,司法制度改革のこの流れが公務員制度改革とはパラレルの問題だと聞いていますが,裁判官の数で約500名増を見込んだような構想を持っているとのことですが,裁判所職員についてはどのような構想というか,増員の見込みはあるのでしょうか。また,京都においては地裁に係属している人訴事件は,それほど多くはないと思われるので人訴移管については,●●家裁では既存の法廷一つでまかなえるのではないかと思われます。 (T) ●●地裁では,人訴事件は現在,500件くらいがあると聞いています。そのうち三分の一くらいが離婚事件ですが,●●地裁では法廷の余裕はあると思われます。したがって,●●地裁の中に家裁の出張所をつくってそこでやろうと思えば可能です。先ほど,書記官の数が増えるのかという話が出ましたが,私見ですが毎年,事務官から書記官に変わるのは200名くらいですが裁判所の職員の数自体は変わらないと予想されていると思います。そうなるとどこから振り変わっていくかという話になるわけですが,事務官からの任官ということになれば事務局の態勢をどうするかということで,書記官をどこまで増やせるかという話にもっていくことになると思います。裁判所職員の数自体を増やすことは,現在の財政状況からみても認められないと思われます。 (U) 物的・人的なもので今年,本庁の方では家裁の家事の調査官が1名増員されましたが、●●支部においてその前の時に調査官が1名減となりました。また,書記官の方ですが,8月に次席書記官の配置があると聞いています。そして少年と家事の平書記官が1名ずつ減になる可能性があります。人的配置の面から見ると現在の状況で人訴が家裁に移管されるとどうしようもないと思います。また,調査官も,●●や●●は未配置支部で非常にお寒い状態です。このような現状では書記官室等で人訴の家裁移管の話をしても,繁忙を極めて誰もそれどころではないといった状態です。 (I) ●●は地家裁併設庁なので物的には地裁の法廷を使うことは可能ですが,人的配置では成年後見事件が増加しており,また●●の場合は調査官は本庁にしかおらず,●●などの各支部には全部出張で補っています。そして人訴の家裁移管については,話ができていないというのが実情です。 (N) ●●も地家裁併設庁なので法廷等の場所はあるのですが,現在,●●本庁は建替え中であり,司法制度改革を見てからということになると思われますが,制度的には古い形で残るのではないかと思います。 (Y) ●●本庁舎は建替えが計画中であり,司法制度改革のモデル庁になると言われています。調査官の増員については,新庁舎ができてから具体的になされる見込みであり,具体的にはどうなるかわかっていません。 (本部:I) 現在,法務省においては検察官1000名の増員と検察事務官1000名の増員が計画されています。裁判所においては裁判官500名の増員が予定されていますが,一般職員については明確な数字は出されていません。しかし,裁判官500名ということになると書記官は1500名程度の増員になると思われます。 (K) 当事者構造の中で,調査官の関与が問題となりますが,訴訟においては調査官に対して反対尋問もなされると思われます。その際に調査官として秘密にしておくべき事についてはどうなるのか,調査報告書にどこまで書けばよいのかが問題となります。家裁への人訴移管によって今までの調査のやり方がかなり違ってくるのではないか,これまでの職権主義の方がよいのではないかと思うのですが,どうでしょうか。 (O) 現行では離婚調停が不調に終われば,弁護士に依頼して地裁で訴訟を起こすことになり,そこまでやる人は多くはなかったのですが,家裁で訴訟ができるとなれば,離婚訴訟がかなり増加すると思われます。そのため,書記官の負担が増大すると思われます。 (本部:I) 裁判所にとって,管轄権がどうするかというもんだいがありますが,離婚調停が不調になっても地裁に行かず家裁でできるということで,当事者の負担軽減になると思います。そして家裁で人事訴訟をする場合,本人訴訟にならざるを得ないと思います。また,新制度によって司法書士が参入してくることになりますがそれによって書記官の権限がどうなるかという問題があります。本人訴訟が中心になれば書記官がある程度,中心になっていく必要があります。今後,われわれとしては,具体的にこうしたいんだということを積極的に議論していく必要があります。 ジャンル別一覧
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